本人でないとの理由で厚生労働省兵庫労働局に父親の労災記録の開示を拒まれたとして、アスベスト(石綿)関連疾患で死亡した元工場労働者2人の遺族が国に不開示決定処分の取り消しを求めた訴訟の判決が5日、大阪地裁であり、三輪方(まさ)大(ひろ)裁判長は不開示は違法として処分を取り消した。
原告弁護団によると、遺族が故人の労災記録の開示を求めた全国初の訴訟だった。
原告は、いずれも兵庫県尼崎市の石綿関連工場で勤務し、平成12、16年に中皮腫で死亡した後に労災認定された男性2人の長男。
石綿被害の救済をめぐっては、厚労省が訴訟を通じて元労働者らに賠償金を支払う手続きを採用。長男たちは昨年3月、厚労省から提訴を促す通知を受けた。しかし、訴訟に必要な労災記録の開示を兵庫労働局に求めたところ「(本人ではない)長男たちに開示請求権はない」と拒否され、同年5月に提訴していた。
三輪裁判長は判決理由で、石綿被害の救済制度は遺族が損害賠償請求権を引き継ぐことも想定されていると指摘。「長男らは損害賠償の請求権を相続しており、その請求に必要な労災記録は長男たちの個人情報にあたる」として長男たちへの不開示決定は違法だと判断した。
判決後、原告のうち神戸市の60代男性は「1年以上も(労災記録が)開示されず、遺族として理不尽な思いをした」とのコメントを出し、大阪市内で記者会見した弁護団の谷真介弁護士は「被害者救済を進めるため、国は責任を持ってスムーズな情報開示をすべきだ」と訴えた。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース